主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【目的】
Radioimmunotherapy(RIT)は、抗体を担体とした放射線の内照射療法である。治療核種にヨウ素131(131I)が選択された場合、抗体から離脱した放射性ヨウ素は甲状腺に取り込まれやすくなる。甲状腺が治療標的でない場合は、放射性ヨウ素の甲状腺取込阻害が支持療法として重要になる。特に小児期の甲状腺は放射線感受性が高いとされており、RIT後、晩発性の甲状腺機能低下症に注意を払う必要がある。131I-メタヨードベンジルグアニジンを用いた小児神経芽腫治療が普及している欧州では甲状腺ブロックの目安が学会より示されている。放射線災害時のヨウ素服用量については、原子力規制庁、FDA、WHOよりガイダンスが発出されている。一方で131I-RITにおけるブロックの方法は定まっていない。今般、小児を対象とした131I-RITの臨床試験を通じてブロックに関する知見を得たため報告する。
【方法】
ブロックに使用する薬剤と投与期間について、ヨウ化カリウム(KI)とリオチロニンナトリウムを131I投与7日前から投与14日後まで投与することが、プロトコル指示となっていた。KI用量は各地域のルールに従うことになっており、1日50mg経口投与を行うこととした。
【結果】
ブロック薬剤の服薬率は100%を維持できた。複数回の131I投与の結果、4週間の連続投与となった。治療量131Iの投与時点で、TSH、FT4は低値を維持し、FT3は基準値内を保っていた。治療量131I投与後48時間の画像所見において、甲状腺への131I取込は認められなかった。また、ブロックに伴う有害事象は確認されなかった。ブロック終了後、FT3、FT4、TSHは基準値内に回復した。
【結論】
画像上、甲状腺への 131I取込が認められなかったことから、ブロックは奏効していたと考えることができる。甲状腺機能低下症の発症抑制が達成できているかは、追加の観察が必要である。放射線防護のためのKI服用は、複数週にわたる連続服用を想定したものではない。他の131I-RITを含めて、安全かつ十分な甲状腺ブロックについて、投与量や投与期間、ブロック効果のモニタリング方法など、情報集積が必要である。