主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第45回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: さいたま市
開催日: 2024/12/13 - 2024/12/14
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人工T細胞受容体であるキメラ抗原受容体(CAR)を発現させた遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)は、標的となるがん細胞を特異的かつ強力に殺傷する。米国で開発された血液がんを対象とするCD19 CAR-T細胞とBCMA CAR-T細胞が国内でも承認され、血液がんの治療戦略は大きく変革した。今後は、他の難治性腫瘍への応用が期待されており、世界中で開発が進められている。 信州大学小児医学教室では、非ウイルス遺伝子導入法を用いたCAR-T細胞の研究を2009年から行っている。骨髄系腫瘍に対する新規CAR-T細胞(GMR CAR-T細胞)の開発には2011年から着手した。2017年からAMED 事業の支援を受けて臨床開発を進める中で、「この治療を必要としている患者さんに最速で届ける」ことを第一に考えた結果、治験製品であるCAR-T細胞を自施設で製造し、自施設での医師主導治験を目指すことになった。開発チームのメンバーは、再生医療等安全性確保法、医薬品医療機器等法といった法律の下での「創薬」を理解するところからのスタートだったが、PMDAとのRS戦略相談やコンサルタントからの助言に基づいて、治験実施に向けた準備を進めた。費用と期間が限られていたため、薬効評価、安全性評価といった非臨床試験は可能な限り自施設で実施した。さらに、既存の信州大学病院先端細胞治療センターCPC(細胞調整室)を、治験薬GMPの基準に沿った治験製品製造を行えるよう再整備した。また、治験薬GMP体制を構築し、治験製品の品質管理に特化した品質管理部門も新設した。現在、信州大学病院では骨髄系腫瘍を対象とするGMR CAR-T細胞と、肉腫・婦人科腫瘍を対象とするHER2 CAR-T細胞の医師主導治験、治験製品製造、および固形がんを対象とするEPHB4 CAR-T細胞の医師主導治験のための治験製品製造を行っている。 細胞治療の医師主導治験の実施は、信州大学病院としても初めての取り組みであった。被検者リクルート、スクリーニング検査、原材料であるリンパ球採取のための成分採血、入院管理などのために、複数科、複数病棟、複数部門との連携が不可欠であり、この院内体制の整備は、信州大学病院臨床研究支援センターの協力を得て進めることができた。治験開始後の現在も、治験コーディネーターの皆さんに多大な支援をいただいている。 今回は、新規CAR-T細胞療法の開発から医師主導治験開始までの経験と、現在感じている今後の課題を紹介したい。