日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第46回日本臨床薬理学会学術総会
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シンポジウム
臨床薬理学で探る排尿障害治療と抗コリン薬
清水 信貴清水 孝洋東郷 未緒東 洋一郎齊藤 源顕
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p. 32-

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抄録

日本排尿機能学会は2023年に約20年ぶりに「下部尿路症状に関する疫学調査(JaCS 2023)」を実施し、その結果、下部尿路症状の有病率は20歳以上で約8割に達し、過活動膀胱(OAB)の有病率も11.9%(20歳以上)と判明した。これらの数値は、排尿障害がわが国において極めて身近かつ重要な健康課題であることを再確認させるものである。本セッションでは、この疫学的背景を踏まえ、臨床薬理学の視点から排尿障害治療における抗コリン薬の意義を改めて検討する。抗コリン薬は膀胱平滑筋のムスカリン受容体を遮断することで尿意切迫や頻尿、夜間頻尿を抑制し、長らく第一選択薬として広く用いられてきた。しかしその一方で、口渇や便秘、さらには認知機能への影響といった副作用は、患者のアドヒアランスや治療継続性を大きく左右する課題である。 本セッションでは、とくに臨床現場で問題となる三つの実践的論点に焦点を当てる。①抗コリン負荷の“見える化”と併用薬整理:治療導入時に併用薬の抗コリン作用を系統的に点検し(例:ACBスケール)、過剰な負荷を避ける取り組みを標準化することが推奨される。これは最新ガイドラインにおいても重要な実践ポイントとされている。②安全性モニタリングの拡張:残尿量や尿流測定といったベッドサイドでの基本指標に加え、高齢者やフレイル患者では転倒・骨折リスク、さらには認知機能への影響を定期的に評価する必要がある。抗コリン作用の蓄積が大きいほど転倒や骨折の発生率が上昇し、3か月以上の使用で認知症リスクが約1.46倍に増加するとの報告もあり、慎重な経過観察が不可欠である。③治療継続性の評価と調整:副作用や有効性のバランスを観察しつつ、長期使用によるリスクを考慮した用量・薬剤選択を行うことが重要である。特に高齢者や多剤併用例では、抗コリン性副作用が増える可能性があるため、きめ細やかなフォローアップと柔軟な治療調整が不可欠である。

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