社会学評論
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特集「国境と性―複数の境界線を問いなおす」
ベトナム―日本間の移住の構造と移住女性の性と生殖に関する健康と権利
巣内 尚子
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2023 年 74 巻 3 号 p. 397-414

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抄録

本稿は,ベトナム出身の技能実習経験者への質的調査をもとに,移住の構造と移民の「性と生殖に関する健康と権利(sexual and reproductive health and rights: SRHR)」の関係を明らかにする.その上で,国家と移住産業,労働市場が関与する移住の構造自体が移住女性の SRHR を剝奪し,技能実習の在留資格をもつ移住女性を非人間化/人種化すること,さらに SRHR の制度的・構造的剝奪状況が妊娠・出産関連の危険に女性と子どもをさらすことを議論する.

具体的には,実習生が SRHR に関しどのような経験をしてきたか検討した上で,SRHR の構造的剝奪に移住女性がどう応答してきたかを本稿は示す.そこでは,実習生の女性たちが,自らの SRHR が剝奪される構造・制度の中で,妊娠―帰国というルートを切実な選択肢としていること,ホスト社会でパートナーとの親密な関係を構築するなど,移住の軌跡が彼女たちのライフコースにおける一段階となりえること,ただし,恋人や友人との交流や自由な外出が許されない実習生もいることが明らかになる.また,正規の在留資格をもつ実習生の基本的権利が剝奪される一方,在留資格をもたない移住女性はパートナーとの同居や人生設計に主体的に取り組む余地があることを本稿は指摘する.

以上から本稿は,実習生が自身の人生を主体的に生きようとする反面,国家,移住産業,労働市場が関与する移住の構造が技能実習の在留資格をもつアジア出身者を労働力としてのみ扱う差別的状況を生じさせていることを示す.

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© 2023 日本社会学会
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