2025 年 76 巻 1 号 p. 79-95
本稿の目的は,制度としてのアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃後の南アフリカ共和国(以下,南ア)における「自由の下に生まれた」世代の認識を事例として,自他に付与される社会的カテゴリへの対峙の様相をもとに「共生」論を考察することである.その際,2014年に南ア西ケープ州の公立学校の12年生の学習者6名を対象に実施した半構造化面接法によるインタビュー調査のデータを分析する.分析の結果,本稿では主に次の点を提示する.第1に,「自由の下に生まれた」世代カテゴリに関しては,同世代として現代の南アを生きることに肯定的な認識を抱いている学習者がいる一方で,同カテゴリによりフラストレーションやプレッシャーを感じている学習者がいることを示す.第2に,「人種」カテゴリの観点から,複雑な認識の様相が浮かび上がってきたことを示す.例えば,「人種」により自他をカテゴリ化する認識もある一方で,「人種」でカテゴリ化せずに「人間」や「その他」とする認識もあることを示す.本稿の結論では,南アの「自由の下に生まれた」世代の特徴として,自身に利益をもたらしうる「カラード」も含めた自他に付与されるカテゴリに対する否定的認識が抱かれる側面があることを示す.その上で「社会的カテゴリの更新」としての「共生」の議論を深化させつつ,アパルトヘイトに根差す自他のカテゴリ化より「自由」であることを同世代の特徴的側面の一つとして示す.