社会学評論
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トランスナショナリズムにおける移民と国家
大井 由紀
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2006 年 57 巻 1 号 p. 143-156

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抄録

移民は国民国家の「他者」とされてきた.このため, グローバル化への対抗手段の1つとしてナショナリズムが現れている今日, 国家の「他者」である移民は, ともすると暴力や排斥の対象となっている.グローバル化時代における民主主義を考える場合, 「他者」へ開かれた社会, つまり公共性をどのように形成していくことができるのかは, 焦眉の問題だといえる.しかし移民と公共性を論じることは容易ではない.移民を国家の「他者」として対置する認識に加え, 移民に対する閉鎖性は主権の行使として位置づけられるからだ.そこで本稿では, 移民と公共性という問題を立てる端緒として, 国家と移民の関係について再考察を行う.
以上の問題意識に基づき2節では, 移民が国家の「他者」とされてきた背景として, 社会科学の方法論的ナショナリズムを指摘する.ここではアメリカのアジア系移民・アジア系アメリカ人を事例とする.そして, 移民と国家の関係について認識する上で重要な変化をもたらした方法論として, トランスナショナリズムに注目する.3節では, アジア系のトランスナショナリズムが, 方法論的ナショナリズムに部分的に依拠しており, これが盲点となっていることを指摘する.さらにこれを克服する方法として, 筆者の事例研究を用い, 国家形成と移民の歴史的関係を見直すことを提起する.

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