抄録
急性呼吸促迫症候群(ARDS)に対する非侵襲的換気(NIV)療法は,現時点では有効性が確立された治療法とはいいがたい.しかし,ARDSに対し非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)で呼吸管理を開始して,それが継続可能であった症例では明らかに予後が良いことが示されているし,軽症ARDSでは有効性が期待できるとする報告もある.NPPVに慣れた施設において,十分モニタリングが可能な環境下で行うことが前提ではあるが,PaO2/FiO2が200~300のmild ARDSがNPPVの良い適応ではないかと考える.初期の重症度スコア(SAPS Ⅱ>34など)とNPPV装着後の反応(装着1時間後のPaO2/FiO2≦175など)も十分に考慮し,NPPVの適応と継続を決定することが必要である.そして,通常の人工呼吸管理のストラテジーのなかには,低容量換気法など有効性が十分確立されたものもあるため,NPPVにより状態が十分改善しない場合には,挿管による人工呼吸管理への移行が遅れることのないように常に注意を払うことが重要である.