抄録
非侵襲的換気療法(noninvasive ventilation: NIV)は臨床現場に普及しているが肺炎による呼吸不全に対しての使用実態についての報告は限られている.今回われわれは肺炎に対するNIVの使用状況を調査・検討した.2011年6月から2012年5月に当院にて人工呼吸管理を行った肺炎患者の患者背景,肺炎重症度と転帰を後ろ向きに検討した.対象患者は46人で気管挿管による管理(invasive ventilation: IV)を開始したのは26名(IV群),NIVで開始したのは20名(NIV群)であった.肺炎の重症度は両群間で有意差はなかったが,人工呼吸開始時のPaO2/FiO2比はIV群で有意に低かった.転帰は,IV群では8名(31%)が死亡,NIV群は2名(10%)が死亡した.NIV群のうちNIV開始前に行ったインフォームドコンセントで,13名(65%)の患者はIVを希望しなかったがNIVによる呼吸管理は希望した.NIVの普及に伴い肺炎という治癒の見込める良性疾患であってもNIVまでの呼吸管理を希望する患者が少なからず存在することが明らかになった.