抄録
喫煙者の高齢化に伴い喫煙関連疾患である慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)と肺癌はさまざまな臨床場面で負荷の増加をもたらす.肺癌外科手術においてCOPD併存率は約40%であるが,その10%の症例でしかCOPDとして認識されていない.COPD併存群ではCOPD非併存群に比較して,有意に在院日数延長,酸素化障害の遷延,術後合併症の増加がみられる.在院日数延長においてCOPDは有意な危険因子であるが,糖尿病や虚血性心疾患はガイドラインに基づき適切に管理されている.肺癌外科手術の術後アウトカムは,COPDに関連する重要な臨床アウトカムでもある.これら術後アウトカム改善への取り組みはさまざまなアプローチで行われているが,COPDに対する適切な術前評価の在り方とそれをもとに行う薬物治療と呼吸リハビリテーションの包括的な取り組みはまだ途上にある.