日常診療で携わる肺炎の大半は誤嚥性肺炎であると言っても過言ではない.また,呼吸器疾患を含む種々の疾病や治療に伴い嚥下機能が低下するため,例えばCOPDや間質性肺炎の診療においても,嚥下への配慮が求められるようになってきている.
一方で,誤嚥性肺炎についてはガイドラインも確立しておらず,日々の診療に疑問や不安を抱える医療者は少なくない.食べさせてあげたい,でも誤嚥をさせたらどうしよう.患者さんとご家族,医療者の思いがうまくかみ合わない.こうした葛藤も多い分野である.
これらの不安や葛藤の多くは,多職種で専門性を発揮し合うことが解決への糸口になる.急性期から回復期,慢性期,在宅と,環境に応じてケアを臨機応変に形作り,情報を伝達しあうためには,基盤となる理解が必要である.本教育講演では,医療者間でのすれ違いの原因になりやすい,誤嚥性肺炎に関する誤解を紐解くことで,明日からの診療の一助になればと思う.