日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
31 巻, 2 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
スキルアップセミナー
  • 桂 秀樹
    原稿種別: スキルアップセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    緩和ケアはがんを中心になされていたが,欧米では非がん性呼吸器疾患(NMRD)の終末期ケアに関してCOPDを中心に1990年代以降,多くの知見が集積されてきた.わが国においても2010年以降,各専門領域の学会が非がん疾患の終末期の医療のありかたについて検討するようになり大きな転換期を迎えたが,NMRDに対する検討はこれまで十分に実施されているとは言い難かった.一方,COPDをはじめとするNMRDは終末期には呼吸困難をはじめさまざまな苦痛を認めるため,近年,NMRDの終末期医療および緩和ケアの重要性が認識されるようになり,2021年には日本呼吸器学会と日本呼吸ケア・リハビリテーション学会から「非がん性呼吸器疾患の緩和ケア指針2021」が発刊され,わが国のNMRDの終末期医療に関する動向は大きく変化した.本稿では,現在のわが国におけるNMRDの緩和ケアの現状と問題点について概説した.

  • 吉澤 孝之
    原稿種別: スキルアップセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 162-165
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    呼吸困難は呼吸器疾患の終末期に最も多く出現しその対応に最も苦慮する症状である.非がん性呼吸器疾患終末期の難治性呼吸困難に対する緩和ケアは基礎疾患に対する標準的治療が最大限おこなわれることが必須条件である.標準的治療が最大限おこなわれてもなお呼吸困難が持続・悪化するようなら症状緩和のための非薬物療法を上乗せする.非薬物療法による緩和ケアをおこなっても症状緩和が困難な場合には,薬物療法としてオピオイドや抗不安薬の使用が考慮される.

  • ―急性呼吸不全―
    西村 直樹
    原稿種別: スキルアップセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    動脈血酸素分圧 60 mmHg以下が呼吸不全であり,比較的短い期間で急速に起こった場合を急性呼吸不全という.呼吸不全には動脈血酸素化不全,換気不全,組織への酸素運搬の不全,組織での酸素利用の不全の四要素があるといわれ,狭義には前二者が呼吸不全である.動脈血酸素化不全は通常は高炭酸ガス血症を伴わないI型呼吸不全になり,換気不全は 45 mmHgを超える高炭酸ガス血症を伴うII型呼吸不全になるので,動脈血血液ガス分析で鑑別する.酸素療法では低流量系デバイスと吸入酸素濃度を一定に保つ高流量系デバイスの使い分けをする.高流量鼻カニュラ(HFNC)の普及が著しく,最近高炭酸ガス血症を伴うCOPD増悪において標準的酸素療法より治療失敗率が低いことが示された.非侵襲的陽圧換気(NPPV)は呼吸器領域ではCOPD増悪,拘束性胸郭疾患を中心に使用され,動脈血pH 7.25~7.35が最も良い適応になる.

  • 茂木 孝
    原稿種別: スキルアップセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    慢性呼吸不全は室内気で PaO2 が 60 Torr 以下という低酸素血症が1か月以上続く場合と定義される.その病態は肺高血圧・肺性心,呼吸筋疲労を中心として中枢神経系,栄養障害など多岐にわたる. 病態からみた慢性呼吸不全の管理ポイントは3つある.1つは低酸素血症と高炭酸ガス血症への対処であり,具体的介入が酸素療法および非侵襲的・侵襲的人工呼吸である.さらにこれらの管理に伴う臨床的問題への対処(モニタリング,アドヒアランスなど)が必要である.第2に栄養,代謝,臓器・筋肉障害への対処であり,介入内容は体重と栄養状態の管理,身体活動性・運動耐容能の向上・維持,および呼吸リハビリテーションである.第3にすべてに共通するのがセルフマネジメント支援である.近年新しい研究も報告されたが,残念ながら酸素療法の適用基準は40年前からほぼ進化していない.一方で新たなデバイスの研究も進んでおり適用拡大も期待されている.

  • ~患者のセルフマネジメントを引き出すために~
    大方 葉子
    原稿種別: スキルアップセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 176-178
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    呼吸器疾患患者は呼吸機能が低下しており,急性増悪により重症化することがある.疾患の自己管理において重要なことは,疾患を患っているのは患者自身であり,患者自身が主体的に行動することにより,身体活動力を向上させ,急性増悪を予防することである.そのため,医療者は患者がセルフマネジメント能力を獲得するために,患者を全人的に捉え,個別性を重視した知識や技術を提供することが重要である.本セミナーでは,慢性呼吸不全患者のセルフマネジメントを引き出すための支援について概説した.

教育講演
  • 吉松 由貴
    原稿種別: 教育講演
    2023 年 31 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    日常診療で携わる肺炎の大半は誤嚥性肺炎であると言っても過言ではない.また,呼吸器疾患を含む種々の疾病や治療に伴い嚥下機能が低下するため,例えばCOPDや間質性肺炎の診療においても,嚥下への配慮が求められるようになってきている.

    一方で,誤嚥性肺炎についてはガイドラインも確立しておらず,日々の診療に疑問や不安を抱える医療者は少なくない.食べさせてあげたい,でも誤嚥をさせたらどうしよう.患者さんとご家族,医療者の思いがうまくかみ合わない.こうした葛藤も多い分野である.

    これらの不安や葛藤の多くは,多職種で専門性を発揮し合うことが解決への糸口になる.急性期から回復期,慢性期,在宅と,環境に応じてケアを臨機応変に形作り,情報を伝達しあうためには,基盤となる理解が必要である.本教育講演では,医療者間でのすれ違いの原因になりやすい,誤嚥性肺炎に関する誤解を紐解くことで,明日からの診療の一助になればと思う.

多職種による症例検討会
  • 門脇 徹, 福場 聖子, 山根 裕子, 清水 里夏子, 田中 祐佳, 笠置 龍司, 柿本 真喜, 石垣 小百合
    原稿種別: 多職種による症例検討会
    2023 年 31 巻 2 号 p. 184-190
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    症例はIdiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis(iPPFE:特発性上葉優位型肺線維症)と診断された65才女性.初診時に既に慢性呼吸不全状態であり同日外来でHOT導入,その1ヶ月後に在宅NPPVが導入された.約4年は比較的安定した経過であったが,その後病状が急速に進行し入退院を繰り返すようになった.それとともにADLが著明に低下し,「できること」や「したいこと」が「できないこと」に変わっていきQOLも著明に低下していった.「できないこと」を受け入れながら「できること」「したいこと」を患者・家族とともに考え,多職種チームで最期までサポートしたケースであった. 本症例検討会においては介入の評価を日本呼吸器学会・本学会合同「非がん性呼吸器疾患の緩和ケア指針2021」(以下「緩和ケア指針」1))に基づいて行った.

  • 荒川 裕佳子, 小熊 哲也
    原稿種別: 多職種による症例検討会
    2023 年 31 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    慢性疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者は,人生の歩みとともに,疾患の進行や加齢により徐々に呼吸機能や身体機能が低下し,呼吸困難が悪化していく.その長い経過において,できるだけ早期から終末期まで生涯にわたり最適な呼吸ケアを,多職種によるチーム医療で,また地域医療連携で支援することが望まれる.第31回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会における「多職種による症例検討会2」では,5年,10年単位の各病期におけるCOPD患者と医療チームの向き合い方を,多職種で討議した.職種や関わる時期,療養場所(病院やクリニック,在宅)により考え方や見方,必要な情報の違いを知る良き機会となった.

ランチョンセミナー
  • 福家 聡
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    COPD治療では長時間作用型抗コリン薬/長時間作用型β2刺激薬の配合剤が主役になっている.咳嗽,喀痰,息切れ症状の改善や身体活動性の向上および維持と,全身性ステロイド投与や入院を要する増悪の回避など将来のリスク軽減が管理目標とされている.チオトロピウム/オロダテロール配合剤は各単剤を上回る呼吸機能,QOL,息切れの改善をもたらす.また肺過膨張を軽減することにより運動耐容能や身体活動性の改善効果が期待できる.一方,吸入療法では患者が正しくデバイスを扱い,適切に吸入することで効果が発揮される.高齢者が多いCOPD患者では,医療者による繰り返しの指導や支援による吸入手技獲得およびフォローが求められる.吸入支援を通じて,疾患理解,副作用回避,アクションプランの理解など,包括的なサポートを行う.

    本稿ではチオトロピウム/オロダテロール配合剤(レスピマット製剤)が患者にどのような生活を届けられるのかを考えてみたい.

  • 川山 智隆
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    本邦のガイドラインではCOPDの薬物療法は長時間作用性気管支拡張薬[抗コリン薬(LAMA)とβ刺激薬(LABA)]を主軸に構築することを推奨し,初期導入はLAMA単剤を用い,効果不十分の場合はLAMA/LABA併用薬を用いるエスカレーション方式を採用している.一方で喘息合併病態には吸入ステロイド(ICS)を追加することを提案している.大規模国際共同試験結果から増悪頻回例,重度の有症状例および末梢血好酸球数増多例にICS/LAMA/LABAのトリプル療法がLAMA/LABAあるいはICS/LABA併用療法に比較して肺機能の改善,症状軽減やQOL改善および増悪抑制効果が示されている.ただしICSを含む治療法では肺炎発症リスクの懸念がある.本稿では第31回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会のランチョンセミナー9「COPDにおけるトリプル療法の意義」で講演した内容に加え,大規模国際共同試験の結果をもとに安定期COPD管理におけるトリプル療法の立ち位置について解説する.

コーヒーブレイクセミナー
  • 杉野 圭史
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 208-214
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    間質性肺炎では,労作時に著明な低酸素血症を呈することが多く,6分間歩行試験等でその実態を明らかにすることは大変重要である.また,急性増悪時には高度の呼吸不全を呈するため,使用法が簡便かつ患者の不快が少ない高流量鼻カニュラ療法が主流となっている.

    間質性肺炎は,労作時の呼吸困難による身体機能低下がディコンディショニングをもたらすため,呼吸リハビリテーションは改善効果が期待できる.特に顕著な胸郭の運動制限を認める上葉優位型肺線維症患者では,コンディショニングおよび低負荷から継続可能な運動療法を施行することが重要である.また,急性増悪合併時には,大量のステロイド投与などによる筋力低下や呼吸機能障害をのこす可能性が高いことから,早期からの呼吸リハビリテーションが必要となる.

    そこで今回,間質性肺炎患者に対する急性期および慢性期の酸素療法および呼吸リハビリテーションの現状と課題について述べたい.

  • 佐々木 結花
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    肺非結核性抗酸菌症の治療は容易ではない.本邦で最も患者数の多い肺Mycobacterium avium complex症:Mycobacterium aviumM.avium)/Mycobacterium intracellulareM.intracellulare)症(MAC pulmonary disease: MAC-PD)では標準治療が定められているが,長期の治療にかかわらず菌陰性化が得られない場合や,いったん菌陰性化しても,増悪,再燃,再感染によって再び菌陽性となる場合がある.6ヵ月を超える標準治療に準じた多剤併用療法が行われたもかかわらず菌陰性化が得られない場合,難治性MAC-PD(refractory MAC-PD)と称されている.

    MAC-PDに対し,有効性のある抗結核薬,一般抗菌薬を組み合わせて用いることで治療を行ってきた.アミカシン・リポゾーム懸濁液吸入(Amikacin liposomal inhalation suspicion: ALIS)は,refractory MAC-PD症に特化して開発がなされ,CONVERT試験でその成績が示された.本邦においても2022年7月から処方可能となり,本稿が報告される時期はすでに発売から1年異常経過している.

    今回,refractory MAC-PD治療におけるALIS投与について報告する.

  • 大西 広志
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 220-223
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    喘息の増悪は,好酸球性気道炎症の存在と密接に関係しており,末梢血好酸球数が多いほど増悪頻度が多い.また,喘息の増悪は呼吸機能の低下を引き起し,呼吸機能低下は増悪のリスク因子でもあるため両者も密接に関係している.重症喘息において,増悪抑制と呼吸機能の改善・維持は重要な治療目標である.獲得免疫系の2型ヘルパーT(Th2)細胞や自然免疫系の2型自然リンパ球(ILC2)から産生される2型サイトカインのインターロイキン(IL)-4,IL-5,IL-13による2型炎症が,喘息増悪と呼吸機能低下に関連している.本稿では,これらの2型サイトカインを標的とした生物学的製剤の特徴と使い分けについて概説すると共に,抗IL-4受容体α抗体デュピルマブの基礎研究および臨床試験の結果を中心に,重症喘息における呼吸機能管理の重要性について解説する.

原著
  • 高橋 順美, 小賀 徹, 佐藤 晋, 平井 豊博, 陳 和夫
    原稿種別: 原著
    2023 年 31 巻 2 号 p. 224-230
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    2018年の診療報酬改定によりCPAP診療に対して遠隔モニタリング加算が新設されたが,運用状況の把握が必要とされる.患者・医療機関双方に有益な遠隔医療の在り方を検討するため実態調査を実施し,制度新設4か月後(2018年)とその1年後(2019年)のCPAP診療状況を比較した.日本睡眠学会・日本呼吸器学会・日本循環器学会の認定・専門・関連施設に自記式アンケートを送付した.CPAP使用人数は104,354人(2018年),116,151人(2019年)であった.1年後の2019年には73.5%の施設が遠隔診療を認知し,うち19.0%,8,854台が遠隔診療を実施中と,わずかに増えた.66.7%の施設が加算点数の増加など見直しがあればCPAP遠隔診療を実施すると回答した.制度新設後1年で受診間隔延長や遠隔医療が進んでいるものの十分とはいえなかった.遠隔診療実施には遠隔加算の診療報酬が十分でなく施設基準等のハードルもあり,全国的な遠隔診療の普及には時間が必要で,今後の普及に期待したい.

  • 村上 知征, 小林 武史, 新國 悦弘, 安達 哲也, 大河内 眞也, 田畑 雅央, 色川 俊也, 小川 浩正, 高橋 識至, 黒澤 一
    原稿種別: 原著
    2023 年 31 巻 2 号 p. 231-238
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】安定期COPD患者において手段的日常生活活動(IADL)を含む臨床項目を広く評価し,IADL規定因子を明らかにする.

    【対象と方法】2019年12月から2021年3月で安定期COPD患者74名(男性66名,年齢74.9±7.7歳,%FEV157.8±20.1%)を対象とした.日本語版Frenchay Activity Index(FAI)を用いIADLを評価し,各臨床評価項目との相関関係,および,それらの因子分析について検証した.

    【結果】FAI平均値は20.2±9.3点であった.FAIは臨床的重症度を示す各指標,呼吸機能,ADL,身体活動性,運動耐容能と有意に相関していた(p<0.05).特に身体活動性の高強度軽負荷活動(2.0~2.9 METs)時間との関係が強く,重回帰分析でも寄与因子であった(p<0.01).また因子分析で抽出された4因子でも身体活動性に関わる因子と相関を認めた.

    【結論】安定期COPD患者のIADLは臨床的な疾患進行と関連しており,特に身体活動性に関わる因子と最も強く関連していた.

  • 中田 秀一, 渡邉 陽介, 横山 仁志, 武市 梨絵, 松嶋 真哉, 中茎 篤, 朝倉 武士
    原稿種別: 原著
    2023 年 31 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】本研究では,消化器外科手術患者における術前フレイルの存在と周術期の身体機能経過との関連について検討した.

    【方法】対象は65歳以上の消化器外科手術患者93例(平均76歳)とした.それらを術前フレイル群,非フレイル群の2群に分類し,身体機能経過を比較した.なお,身体機能は術前と退院時に測定した握力,等尺性膝伸展筋力,片足立位時間,6分間歩行距離とし,その術前比を算出した.加えて,術後経過として,術後合併症併発率と入院期間についても比較検討した.

    【結果】身体機能経過のうち等尺性膝伸展筋力(%)の術前比は,フレイル群,非フレイル群の順に,85±18%,94±17%と2群間で有意差を認めた(p<0.05).同様に,術後経過のうち合併症併発率は順に60.0%,26.5%と2群間で有意差を認めた(p<0.05).

    【結論】術前フレイルは,周術期の身体機能を始めとする術後経過に影響を与える可能性があるため,フレイルに対する包括的な介入の必要性が示唆された.

  • 小野 央人, 小林 武史, 村上 知征, 高橋 識至
    原稿種別: 原著
    2023 年 31 巻 2 号 p. 245-251
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】身体活動性の定期評価と身体活動性向上のための指導を行っているCOPD患者へのCOVID-19流行の影響を明らかにする.

    【対象と方法】身体活動性の評価と指導を定期的に行っている安定期COPD患者42名(男性37名,平均年齢74.5±8.8歳)を対象とし,COVID-19流行前(2019年4月~2020年1月)と流行下(2020年2月~2021年2月)の身体活動量を比較した.また,定期評価月別の平均歩数の推移をCOVID-19流行前から流行下にかけて分析した.

    【結果】COVID-19流行前と流行下を比較して身体活動量に有意な変化はなかった.2020年3・4月においては,6ヵ月前と比較して平均歩数が減少していたが,6ヵ月後には流行前の水準に回復した.

    【考察】COPD患者において,COVID-19流行下に身体活動性の評価と指導を定期的に行うことで身体活動量の低下を抑制できた可能性がある.

症例報告
  • 岡本 美貴, 吉永 聡史, 岩江 奈津子, 松本 亮
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 31 巻 2 号 p. 252-255
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    当院入院中の非侵襲的陽圧換気療法および持続性陽圧気道圧療法を施行している3名の患者について,それぞれが抱えるインターフェイスの問題点に対する改良を試みた.その結果,治療効果の向上,医療関連機器圧迫創傷の防止,生活の質の向上が得られたと考えられる.

    また,医療者によるマスクリークを解消するための工夫と努力は,患者との信頼関係を深め,心理的な苦痛を和らげる上でも重要と考えられた.

  • 輿石 勇也, 伊藤 輝, 山﨑 丞一, 稲村 真治, 中川 隆行, 野中 水, 薄井 真悟, 大石 修司, 齋藤 武文
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 31 巻 2 号 p. 256-259
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    肺アスペルギルス症である本症例は,外科的治療の適応と判断され,気管支断端瘻のリスクを考慮して,右肺葉部分切除+広背筋弁による気管支断端被覆術が施行された.リハビリテーション(以下;リハ)は,医師の指導のもと肩関節の運動制限に配慮の上,術前から介入し,術後38日に退院となった.入院中は合併症なく経過したが,術後50日目の外来時のCT所見にて右上葉断端中央にわずかな気管支断端瘻が見られた.肺葉切除施行時に広背筋弁を用いた患者に対するリハは,術前では患者へ術後に想定されるリスクの指導を行い,術後は医師と連携を図りながら肩関節に配慮した運動療法を実施することが有効と考えられるが,退院時の日常生活指導および外来移行時の適切なフォローが必要と思われた.

  • 吉川 友洋, 渡邉 亮, 本間 直健
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 31 巻 2 号 p. 260-263
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症から12週後に肺区域切除術を施行した症例に対する周術期リハビリテーション(リハビリ)の経験について報告する.症例は77歳男性.右下葉原発性肺癌と診断後に,中等症IIのCOVID-19を発症した.7週後に室内気吸入下で自宅退院となったが,労作時の息切れが残存した.術前には抑うつを認め,術後は在宅酸素療法が必要になることへの不安から,酸素投与下での歩行練習に積極的ではなかった.酸素投与下での離床の重要性について理解を深めてもらい,運動療法の効果を実感できるように酸素需要の少ない動作指導を行った.その後は自主的に歩行練習を行うようになり,合併症なく術後14日目に室内気吸入下で自宅退院となった.COVID-19発症後の患者に対する肺切除術の周術期リハビリでは,呼吸機能低下による心理面への影響に配慮しながら患者教育や動作指導を行うことが重要と考えられた.

  • 多田 新太, 奥條 朝子, 宮崎 慎二郎, 中村 洋之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 31 巻 2 号 p. 264-267
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    下気道感染症により喀痰喀出不良を生じ,頻回に慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪を繰り返していた重症COPD患者に対し気道クリアランスの改善を目的に呼吸リハビリテーションを実施したが,脱水や混合性換気障害等から排痰に難渋した.入院中,肺炎の再発を認めたため気道クリアランス改善が必要と考え高流量鼻カニュラ(HFNC)を導入した.導入3日目には良好な排痰が得られ,最終評価では喀痰の性状が膿性痰から漿液性痰へ変化し,排痰回数の減少も認め,COPD assessment testの喀痰項目は5点から2点へ,総得点は20点から17点へと改善した.加温・加湿効果に加え,死腔換気ガスのウォッシュアウトや軽度のPEEP効果による換気補助効果も作用し気道クリアランスの改善が得られたと考える.一方でHFNC使用中の問題点である活動範囲の制限により運動機能の低下を認めた.HFNCを使用する場合は,運動機能やADL低下の予防にも着目し介入することが重要であると考えられた.

  • 豊浦 尊真, 本田 憲胤, 中上 和洋, 野村 知里, 北島 尚昌, 福井 基成
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 31 巻 2 号 p. 268-272
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    Chronic obstructive pulmonary disease(COPD)患者は,呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の継続が重要とされ,身体活動性の向上や再入院抑制が期待される.しかし,本邦の呼吸不全者に対する訪問リハビリテーション(訪問リハ)の実施率は3.8%と低い.当院の理学療法士が入院中から退院後も自宅で呼吸リハを継続し,その後訪問看護ステーションに引き継ぐことで,地域における呼吸リハの普及を目指している.今回,我々は約2年間に9回の入退院を繰り返していた慢性II型呼吸不全合併のCOPD患者に対し,退院後訪問リハを導入することで,不安が軽減し,生活範囲が広がり,再入院を抑制できた症例を経験した.退院時Hospital Anxiety and Depression Scaleは 8/7点,Life-Space Assessmentは4点だったが,3ヵ月後には2/3点と22点に改善した.以降,訪問看護ステーションに引き継ぎ20ヵ月間再入院することなく自宅療養できた.退院後の訪問リハ継続とその後の呼吸リハの引き継ぎが有効であった事例を,ここに報告する.

  • 鳥井 亮, 山口 雄大, 畑 亮輔, 樵田 千洋, 樋口 周人, 中元 洋子, 吉井 千春, 矢寺 和博
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 31 巻 2 号 p. 273-276
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    症例は74歳男性.3年前に労作時呼吸困難が出現し,当院を受診した.慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断し,長時間作用性抗コリン薬(LAMA)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)配合薬による治療を開始した.しかし,徐々に自覚症状の悪化,呼吸機能の低下や労作時低酸素血症を認めたため,在宅酸素療法導入も検討された.COPDに対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハビリ)としてケア・トランポリンを用いた音楽運動療法を毎週1回,9ヵ月間行ったところ,労作時呼吸困難は軽減し,mMRCは2から1,CATは22点から13点と改善を認めた.肺機能検査にてFEV1は 1.59 Lから 1.78 L,VCは 3.45 Lから 3.85 Lまで増加した.また,1日平均歩数は,4,000歩以上改善し,6分間歩行時の最低酸素飽和度は85%から91%と改善し,在宅酸素療法を導入しなくても日常生活が送れるようになった.

奥付
feedback
Top