2023 年 32 巻 1 号 p. 23-27
外科周術期のリハビリテーションは,術後呼吸器合併症予防とADL早期獲得を目的に,早期離床を主な手段とし,排痰や呼吸練習などのコンディショニングを付加する術後の介入が主体となる.これに対して,インセンティブ・スパイロメトリーを含めた呼吸練習は,術前のリハビリテーションの一環として慣習的に行われてきた.術前のリハビリテーションは,がんのリハビリテーション診療ガイドラインにおいて実施が推奨されているが,そのプログラムは運動療法を中心とした包括的な内容であり,呼吸練習単独の効果は示されていない.加えて昨今,在院日数の短縮化によって,十分な期間を確保しにくいため,その効果はより乏しくなる可能性がある.これらを踏まえると術前患者に対するリハビリテーションでは,エビデンスの乏しい呼吸練習に時間を割くべきではない.