1996 年 6 巻 2 号 p. 141-147
昨年の阪神淡路大震災は,6,500人以上の犠牲者を出す未曾有の大災害であった.その混乱の中,在宅酸素療法患者は,どのような状況に遭遇し,いかに生き抜いたかを記録する目的で調査を行った.地震直後,帝人K.K.が作成した被災患者名簿より,無作為に242名の患者を抽出し,電話訪問を実施,許可の出た患者103名に対し戸別訪問を行い,聞き取り調査を実施した.調査内容は,前半では地震前の生活環境,被災状況を,後半では被災直後および調査時における患者の身体症状,受けた喪失感の程度,精神科領域で使うDSM-IVのPTSD診断基準4)を用いたPTSDの程度についてである.今回特に,身体症状,喪失感,PTSDについて震災直後と調査時で,調査前半の内容の各条件下ではどう変化したか検討した.身体症状,喪失感は,有意に回復傾向を示したが,PTSDに関する調査結果は,地震が患者に対し持続的,晩発的に作用した傾向を示した.