研究 技術 計画
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企業経営と研究開発の関係に関するシミュレーションの試み : その6 研究開発主導型経営の経営管理と期待される企業業績
二宮 和彦
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1997 年 11 巻 1_2 号 p. 79-88

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抄録
先進性と独創性に優れた実用的な新製品の開発を研究開発部門の指導理念とし、その成果をビジネスに結びつけることにより事業の展開と企業の成長を図る企業経営を研究開発主導型経営と名付け、それを軌道にのせるために必要な経営管理法を提案した。この管理法は、JSR-RDMモデルと呼ぶ統計的なシュミレーションモデルを利用して得た過去の諸知見に基づいて新たに体系化されたものであり、その骨格は、上述した研究開発部門の指導理念とともに、税前利益極大化条件の維持管理に関するもの、セクター別管理に関するもの、および製品の限界利益管理に関するものの3種類の経営管理項目と管理標準により構成される。ここにいうセクター別管理とは、売上高〜人的固定費、限界利益〜研究開発費および税前利益〜物的固定費という、3組の直接比例関係にある経営指標同士の組合わせにつき個別に管理する方法である。また製品の限界利益管理とは、壮年期の製品の限界利益を特定水準より高額にするためのものである。そしてこれらの諸管理が正常に機能すれば、企業の研究開発費と限界利益とは循環的に増大し続け、それに伴って収益は向上し、企業規模も拡大し続けると期待できることを示した。また企業規模の増大とともに、売上高、限界利益、税前利益、研究開発費、人的および物的固定費などの主要経営指標がどのように変化するかを、JSR-RDMモデルによるシュミレーション計算によって示した。さらにこの研究開発主導型経営の問題点として、企業規模の増大に伴うハイテク指数の低下を挙げ、対策案の一つとして企業の分社化を提案した。
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1997 研究イノベーション学会
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