2019 年 44 巻 3 号 p. 385-390
症例は,70代女性.微熱,感冒様症状を自覚し,その後,全身,顔面の浮腫,胸苦が出現したため,当院を受診した.胸部X線写真で胸水貯留,肺うっ血を認め,心不全を疑われ心エコー図検査を施行した.経胸壁心エコー図検査では,右冠尖–無冠尖交連部と無冠尖にエコー輝度の高い疣腫の付着があり,高度な大動脈弁逆流(AR)が生じていた.経胸壁心エコー図検査から感染性心内膜炎(IE)が疑われ,IEの弁機能障害による高度なARが原因で心不全を生じていると判断し,入院となった.体温は微熱で炎症反応上昇が軽度であったこと,疣腫のエコー輝度が高かったことから,治癒期のIEの可能性を考えたが,腹部エコー検査で脾膿瘍/脾梗塞を疑うエコー像を認めたため,活動期のIEを疑った.心不全と塞栓症を発症していることから,早期の外科治療が必要と考え,転院となり手術を施行した.手術所見では,右冠尖–無冠尖交連部,すべての弁尖に疣腫を認め,疣腫と弁尖を切除し,牛心囊膜生体弁に置換した.血液培養はすべて陰性であったため,血液培養陰性心内膜炎が疑われた.家族への病歴聴取から,起因菌としてBartonella属を疑い,疣腫でPCR法を施行したところ,Bartonella quintanaが検出され,同菌によるIEと診断された.Bartonella quintanaは,近年,路上生活者,アルコール中毒者などのIEの起因菌として注目されているが,本邦でのBartonella属によるIEの報告例は少なく,教訓的な1例であったため報告する.