抄録
オロチョン民族の人びとは、長らく漁猟を生業とし、可動式の天幕式住居を用いた移住生活を継承しながら、きわめて特徴的な生活文化を形成してきた。なかでも「樺皮」と称される白樺の樹皮を材料としたものづくりには、オロチョン民族が長い歴史のなかで培ってきた資源循環型生活の知恵が豊かに内包されている。 しかしながら、1953年以降、このような人びとの生活に大きな変化が訪れた。それに伴い、生活基盤が安定し生活水準は向上したものの、長い歴史のなかで育んできたオロチョン民族ならではの生活文化は急速に消失する傾向にある。本研究は、大興安嶺に定住したオロチョン民族の人々のあいだで継承されてきた「樺皮」を用いたものづくり文化を探求し、その特質を考察した。この樺皮文化は、数千年前からすでに実施されていた。「ものを大切にする心」「ものを作る喜び」「ものを中心とした氏族の絆」は、日常の生活から自ら学び、氏族のなかで伝承されてきた。樺皮文化が地域コミュニティーのなかで、人びとのつながりを形成する要素の一端を担っていたことがわかった。