抄録
本研究は、フォーメーションにおける個人個人の状況判断についての意識をより多元的に顕在化させることを目的とした、フォーメーションの学習支援ツールの開発を試みるものである。本稿では、バスケットボール競技を事象として取り上げ、「MetaBoard」の開発について示す。
フォーメーションの習得には、個人個人が、時間的な流れや空間的な位置を把握するだけではなく、自己の状態が、環境や他者の状態とどのように関わりがあるのか意識的に把握し、それによって行為決定を行える状態にならなければならない。そのためには、状況判断についての意識をより多元的に顕在化させながら、能動的に学ぶ必要がある。
「MetaBoard」は、実践的練習を促すための事前シュミレーションという使われ方を留意し、プレイヤーの状況に則した「合わせ」や「間」の取り方を意識しながら、フォーメーションを動的にシュミレーションできるソフトウェアである。マルチマウスシステムを搭載し、複数のプレイヤーによって、リアルタイムで動きの記述を行うことが可能である。また、評価実験によって、実践能力と「MetaBoard」の作成能力に関連性があることを示唆した。