抄録
芸術家と職人の団体「ウィーン工房」(1903-1932)の幾何学的デザインは、オーストリア・ユーゲントシュティールの典型様式である。本研究は、20世紀初頭オーストリアの近代デザインの特徴の解明を目的に、ウィーン工房製品様式とデザイナーの造形思想、および世紀転換期ウィーンの文化動向との関連性を明らかにする。
ウィーン工房の母胎は、新たな時代様式の確立と「総合芸術」の実現を目指したウィーン分離派であった。ウィーン工房の単純な家具や金属細工は、イギリスを中心とする工芸改革運動の理想と一致する。しかし装飾は皆無ではなく、そこには歴史主義を批判し機能を暗示するものとして装飾を節制した、当時のウィーンの新たな造形観念が現れている。また、簡素なデザインには、1900年前後のウィーンで郷土的表現として流行したビーダーマイヤー様式との類似性が認められる。