抄録
少子高齢化に直面し、地域におけるにぎわいの創出が課題となっているが、地域に潜在的に現存する歴史的な土木構造物の発掘と利活用は活性化のひとつの鍵と考える。筆者らは、鹿児島県内の少子高齢化地域のひとつである姶良市の山田地域において、歴史的土木構造物である山田橋を利活用した同地域の活性化に取り組んでいる。本稿は、その地域活動と地域教育の取組みについて報告するものである。山田橋は昭和4年に竣工した鉄筋コンクリート橋であり趣深く、日常の暮らしや風景の一部となっているが、その価値は顕在化していない。筆者らは山田橋を対象に地域の古老から生活の記憶を収集するオーラル・ヒストリー調査を実施し、口伝情報をもとに山田橋の歴史紙芝居を制作、地域の高齢者と子供を対象に実演会を開催した。また、山田橋の橋上を手作りの灯篭で灯す点灯イベントを企画し、設置する和紙灯篭を地域の子供と高齢者が一緒に制作する住民参加型ワークショップを開催した。点灯イベント当日は橋上に150基の灯篭を設置し、地域の内外から200名を超える参加者が来場した。本稿で示す取組みは、時間経過とともに増した歴史的構造物の精神的価値を顕在化するひとつの方法であると考える。