海外から多数の観光客が日本を訪れ,更なる増加を目指し,観光地間の競争とともに,新規観光資源の発掘,開発も盛んに取り組まれている。
前報では,観光に関連する情報誌などでもよく用いられる「かいわい」の概念について述べるとともに,そのかいわいを構成する要素の一つとしてのサウンドスケープの概念についても述べた。本研究では,空間的,観光的価値の向上を目指し,かいわいを構成する要素としてのサウンドスケープについて,その抽出と分析を行っていくことを目的としている。
本稿では,かいわいを構成する要素としてのサウンドスケープについて,福井県越前市の旧今立地区(岩本,大滝)かいわい,東京都台東区浅草かいわいの事例を中心に分析結果を述べている。同じかいわいにおいても,季節や天候,時間帯によって,得られる音の種類や質は異なる。また例えば浅草寺の夜間のように観光客がほぼいない状況であっても,都会では大瀧神社のような静寂感は得られない。一方で大瀧神社のように音が少ない空間であっても,積雪の有無によって,より静寂感が際立つように感じる事例も確認できた。