主催: 日本デザイン学会
会議名: 日本デザイン学会第73回研究発表大会
回次: 73
開催地: 千葉工業大学 津田沼キャンパス
開催日: 2026/06/12 - 2026/06/14
本稿は、中国チベット自治区シガツェ市ギャンツェ地域において制作・使用される伝統的敷物「カデン」を対象とし、その形態的特質を明らかにすることを目的とする。カデンは寒冷な高原環境のもとで保温のために用いられると同時に、日常生活や儀礼において広く使用される生活用品である。しかし従来研究は制作技術に偏り、生活実践との関係は十分に検討されてこなかった。本稿では、実物資料150点の観察および聞き取り調査に基づき、形状・素材・文様・色彩の四側面から分析を行った。その結果、第一に、カデンの形状は身体尺度と生活様式に対応し、「座る」と「横になる」という行為に適合する寸法として構成されていることが明らかとなった。第二に、素材は地域資源と生業構造に基づき、羊毛・ヤク毛といった在地資源に加え、綿糸は交易を通じて導入されたものであり、時代的変化が反映されている。第三に、文様および色彩には宗教的象徴と生活に対する願いが表現されるとともに、外来文様の再解釈が確認される。また色彩の使用には場面に応じた区別がみられる一方、日常空間にも宗教的意味が取り込まれている。以上より、カデンは当該地域の生活文化を物質的側面から表出する存在であり、身体・資源・意味の三側面において構成されていることが示された。本稿はその基礎的整理を行うものであり、今後は使用実践や儀礼的側面を含めた総合的理解が求められる。