抄録
本研究は、1957 年に国立近代美術館で開かれた「20 世紀のデザイン展:ヨーロッパとアメリカ」(以下、20 世紀展)の開催経緯を通じて、同展のデザイン史上の重要性を検討する。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のグッドデザイン展を参照した国立近代美術館の企画が、MoMA のキュレーターであるアーサー・ドレクスラーによって変更を迫られ、欧米の工業デザインの歴史を紐解く展覧会として開かれたことを明らかにした。
また、グッドデザイン展を実施したエドガー・カウフマンJr.からドレクスラーへとMoMA のキュレーターが変わり、デザイン展の方針が転換したことをMoMA の要求の根拠に挙げた。商業的なグッドデザイン展と審美的な20 世紀展は性格を異にする展覧会であり、グッドデザイン運動の高まりの中にあった日本のデザイン関係者は戸惑っていた。また、米国文化の影響下にあった当時の日本で最初に開かれた本格的なデザイン展が、非商業的な意識に基づく20 世紀展として開かれたことで、日本のデザイン展の方向性が決定づけられた可能性を考察した。