2025 年 72 巻 2 号 p. 2_9-2_18
本研究の目的は、十五代酒井田柿右衛門の作風の特徴と美意識について分析し、十五代がどのようにして現代の陶芸に対応し、伝統と革新を融合させているかを明らかにすることである。本研究では、2017年から2019年までに行われた個展におけるギャラリートークを対象にテキストマイニングを行い、作品制作についての信念や原理、コンセプトなどが実際の作品にどのように実現・実装されているのか分析を行った。その結果、2017年までは「様々な形状の濁手素地にシンプルに文様を描く」作風であったが、2018年から「柿右衛門様式の色を意識した修正」が加えられるようになり、2019年には「柿右衛門様式のバランスを意識したモチーフの構成」が行われ、デザインの風景化が進んだことが明らかになった。これは単に古典に回帰する意味ではなく、現代感覚を持った十五代が自身のモチーフを使って、現代の人のために作品を制作するということが伝統と革新の融合であり、停滞せず作り続けることが新たな創造につながり、作風となっていくことが明らかとなった。