抄録
小論では、科学教育ならびに科学教育研究における質的研究の意義について述べる。まず、今日的な意味での質的研究の定義、その特徴、多様な思想的・手法的系譜について述べ、質的研究の枠組みを示す。つぎに質的研究の手続きについて、データ採取・収集、データ作成、分析と理論化、等の点から述べる。さらに研究倫理について触れた後、量的手法との関係を、「仮説」の意味の違い、研究的役割の違い、背景とする認識論の違い、両者の親和性と併用、の各点から述べる。最後に、最近の科学教育研究を、そのデータや手法の点から外観した上で、質的研究が科学教育にもたらすさまざまな可能性についてまとめる。