抄録
近年、小中高等学校では自然体験や観察・実験の機会が減少しているという。実際、公立A大学の入学者を調査したところ、観察・実験の経験不足、あるいは理科履修科目、特に自然史科学に関係する生物II、地学I・IIの履修率が低いことが認められた。従って、学士課程教育においてはこのような現状をふまえた自然科学的教養教育の確立、および自然体験や観察・実験を積極的に導入した授業プログラムの開発が望まれる。本稿では、多人数授業が避けがたい全学共通教育の実状も考慮し、多人数対応型の野外観察実習プログラムの開発と授業実践を試行した。授業後回収した学生の感想を分析したところ、自然に対する認識や情意面に関して前向きな変化の記述が顕著に認められた。