抄録
本稿では最近のイギリスの図形指導における証明指導の現状と今後の課題について報告する. 「論証の意義」 (小関・國宗,1987),特に「論証の一般性」と「論証のしくみ」という観点からイギリスの図形の論証・証明指導を考察してみると,2000年代に入って王立協会やLongitudinal proof projectなどの研究を契機として,数学カリキュラムにおける証明の位置が改めて見直され,2007年のカリキュラムにおいて,特に「論証の一般性」と「論証のしくみ」の学習の機会を提供する教材としてその居場所を取り戻しつつある.特にイギリスの「国家カリキュラム」では, 「幾何学的な推論」として,第8学年から第11学年まで長期にわたり,継続的に「論証・証明の意義」を指導することが明示されており, 「論証・証明の意義」の指導に問題がある日本の図形の論証・証明指導改善のためのカリキュラム開発への示唆があると考える.