抄録
本研究では,証明の構想における情意を捉えるための枠組みの構築に向けて,子ども達の情意を向ける対象を分類することを目的とする。これまでの情意に関する研究では,数学全体を対象として情意が捉えられており,教師が意図する対象に対する情意を具体的に捉えるという点では不十分である。そこでより具体的に情意を捉えるために証明の構想に焦点をあて, Klopfer (1976)の枠組みに着目することで情意を向ける対象を明らかにした。その結果,少なくとも,証明の構想のプロセスに表れる行為を指す「証明の構想のプロセス」と,数学教育という文脈を越えて古くから数学において大切にされてきた,証明の構想の真正な捉えを指す「思考の方法としての証明の構想」の二つがあることが明らかとなった。