抄録
アシドバクテリア門細菌は普遍的かつ優占的な土壌微生物群であることが知られている。しかしながら,核酸ベースの解析において土壌から高頻度に検出されるものの,他門に比べると単離培養株は極めて少ない。単離培養例が少ない,すなわち生理生態やゲノムに関する情報が少ないことは,相同性検索に依存する核酸ベースの解析において致命的である。土壌の最優占群であるはずのアシドバクテリア門細菌を考慮せずに結論を導かざるを得ず,アシドバクテリア門細菌の生態機能を過小評価したり見落としてしまっている可能性がある。限られた単離培養株に基づく解析ではあるものの,アシドバクテリア門細菌の様々な生理生態や重要な生態系機能が報告されている。こうした散発的な報告は,アシドバクテリア門細菌の生態的重要性を強く示唆するものであり,アシドバクテリア門細菌を考慮しづらい土壌微生物学研究の現状の打破の必要性を強調する。筆者らは土壌そのものを培地として用いた集積培養によって,新系統のアシドバクテリア門細菌が多数単離できることを見出した。本稿ではこれらの研究成果について,アシドバクテリアの系統分類や単離の歴史に関する概説を添えて,解説する。