2026 年 60 巻 2 号 p. 25-29
高齢者は入院中にサルコペニアを発症しやすく, 約15%が罹患するとされている. その要因として, 低BMI, ベッド上安静, 食事摂取量の減少などがあげられる. 高齢者では, 摂取量の低下, 利用能の低下, 必要量の増加という3つの要因により, 十分量のたんぱく質摂取が推奨される. 一方で, 基礎研究により, エネルギー制限が筋肉量を減少させることが明らかになっている. しかし, 急性期病院では患者の入院中の平均エネルギー摂取量が約760 kcal/日と著しく低く, 推定エネルギー必要量の半分以下である. 特に, 低栄養のリスクが高い嚥下障害者が摂取する嚥下調整食は, 食事の栄養価は通常食よりも低いことが分かっている. そこで, 中鎖脂肪酸トリグリセリド (MCT) を用いた栄養強化嚥下調整食を開発し, その臨床効果を検証した結果, エネルギー摂取量の増加とADLの改善が認められた. MCTは脂質代謝において体脂肪蓄積を促進せず, 骨格筋代謝にも好影響を与える可能性が示唆されている. 今後は, 基礎研究の成果を臨床で検証し続けるとともに, エビデンスに基づいた栄養管理を実践することが重要である.