抄録
湿原の保全という観点から植生の変化が水収支に与える影響を明らかにすることを目的とし,美唄湿原からの流出項で最も大きい蒸発散量を,ライシメ ータ法により,侵入植生であるササ群落と原植生であるミズゴケ群落で測定した。その結果,年間蒸発散量はササ群落よりもミズゴケ群落の方が多く,侵入前線付近のササが蒸発散量を増加させ地下水位低下をもたらしササが更に湿原内部へ侵入するという可能性は低いと考えられた。また水位を変えたライシメ ータによる蒸発散速度評価の結果から,ササ群落では水位が蒸発散速度に与える影響が大きく,ミズゴケ群落では地下水面が 一20 cmまで低下してもミズゴケの生育を悪化させることはないと考えられた。更に,ササ群落でボーエン比法,ミズゴケ群落でペンマン法により,それぞれ評価した蒸発散速度との比較から,ライシメ ータ法は群落全体の蒸発散速度を評価できることが示された。