土壌の物理性
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農地連鎖系集水域における浅層地下水の水文特性解析 一栄養塩類の周辺水系への流出リスク評価に向けて一
飯山 一平松森 堅治藤原 英司中島 泰弘
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2007 年 107 巻 p. 17-26

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抄録
台地上畑から低地水田へと続く農地連鎖系集水域において,営農活動の地下水環境への影響を評価するには,集水域の水文特性を知る必要がある。そこで,農地連鎖系小集水域からの地下水流出特性を明らかにすることを目的に,物理モデルにより浅層地下水流動を解析した。その結果,水田に到達する流線の始点は水田領域から70m程度の範囲に限られ,集水域からの流出の61%は深部浸透流出していると評価された。よって,浅層地下水へ溶脱した栄養塩類の6割強が水田領域を経ずに流出している可能性が示唆された。この,深部浸透流出の卓越は,深部浸透流出の通水断面積が側方流出の通水断面よりも遥かに大きい地形的特徴に由来したことから,類似の地形の他集水域においても予想された。さらに,モデルが最も高い感度を示したパラメータの不確実性領域を「実測値への最適解の前後2オーダー以内」と設定し,集水域からの栄養塩類の流出リスクを「涵養された地下水の95%が水田領域をバイパスする確率」と定義して求めた。その結果,不確実性領域がパラメータの母集団の99%を包含する場合でも,流出リスクは44.8%存在する,と評価された。
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© 2007 土壌物理学会
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