本研究では,大区画汎用水田でダイズの多収を目指し地下水位のみを制御した栽培試験を試みた。試験圃場(試験区,伸縮性越流水閘使用)は,多くの水分を必要とする開花期以降〜最大繁茂期(8月)に地下水位を地表面下10cmに設置し,慣行圃場(慣行区,水平水閘使用)は,地表下80cmで水閘を周年開放とした。その結果,初年目では,8月の試験区の地下水位は慣行区に比べ高くなった。2年目は8月末から9月にかけて試験区が慣行区に比べ高い地下水位となった。ダイズ2年作付け後の両区の作土層の気相率と粗孔隙は初年目の作付け前よりも高く,畑地化が進んでいた。透水係数は,経年的に両区ともに作土層および心土層が良好となり,スキ床層では大きな違いは認められなかった。ダイズの生育は,両年とも生育期間を通して,主茎長,節数で慣行区がやや優っていたものの,子実重は試験区が慣行区に比べ初年目で25%の増収となった。2年目は16%の増収となった。以上のことから,一般圃場で簡易に地下水位を生育時期でコントロールができる可能性のあること,従来の土壌水分制御に比べ過湿気味なコントロールによる増収の可能性が指摘された。また,地下水位制御においては,透水性の良い作土層と,心土層を難透水性に維持する圃場条件が重要であり,圃場の地下水位の周年管理の必要性が示唆された。
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