土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
地下水位制御による土壌の酸化還元がダイズの生育収量 およびカドミウム吸収におよぼす影響
村上 章佐々木 長市中川 進平太田 誠仁
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 119 巻 p. 29-38

詳細
抄録

地下水位制御によるダイズ栽培で土壌の酸化還元層が生育収量および子実中のカドミウム吸収におよぼす影響について明らかにすることを目的とした.水位を制御できる 3 試験装備を設けて大豆を栽培した.試験装備は,それぞれ地下水位を 10 cm と 40 cm で固定した試験区および開花後約 50 日間のみ地下水位を 40 cm から 10 cm に上昇固定した試験区(40-10-40 cm 区)で行った . これらの試験装備は同じ砕土率 80 % の水田土壌を用い,試験は 2007 から 2009 までの 3 カ年行った.1)3 試験区は,作付け期間をとおして設定した地下水位の上部土壌は酸化状態で,地下水位の下部土壌は,還元状態であった.40-10-40 cm 区は,設定した地下水位の上下により短期間で酸化状態や還元状態に変化した.2)3 試験区の根重は,酸化状態である 0 cm から 10 cm の区間で最も多く,深度方向に減少した.40-10-40 cm 区と 10 cm 区は,深さ 10 cm まで根毛状の細根がマット状に広がっていた.40 cm 区は太 い根が 40 cm 深まで認められた.40-10-40 cm 区は,深さ 10 cm 以下に根は少なかったが,40 cm 深まで存在が確認された.3)10 cm 区の収量は,40-10-40 cm 区や 40 cm 区に比べ低くなった.40-10-40 cm 区と 40 cm 区は,開花前までは同様な生育あったが,40-10-40 cm 区は,40 cm 区より生育が劣り減収した.4)収穫時の子実のカドミウム含有率は,10 cm 区と 40-10-40 cm 区は,40 cm 区に比べ低い傾向であった.5)地下水位制御により開花期以降に土壌を還元状態にすることは,カドミウムの吸収抑制に有効であることが示唆された.

著者関連情報
© 2011 土壌物理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top