抄録
第 2 次世界大戦後の土壌物理研究は地力保全基本調査事業と土地改良事業の影響を強く受けた.1959年の「土壌の物理性」第 1 号から 2011 年の第 118 号を対象に,10 年区切りで土壌物理研究の動向を振り返った.また,わが国で用いられた専門書,教科書ならびに,土壌物理研究会の出版物を紹介した.土壌物理の社会的貢献という視点から,今までに出されてきた農業生産のための物理性指標を取り上げ,実用上の意義とは別に,現在の土壌物理の知識を加味して解釈すべきことを指摘した.さらに,依然として残されている農業生産上の問題点に触れた.土壌物理学会の目的に環境科学の発展への貢献が加わって 12 年経過したが,環境研究で注目しなければならない点をコメントした.最後に現場に出て研究を行う大切さを強調した.