抄録
土壌の季節的な凍結融解がもたらす短期集中的な一酸化二窒素(N2O)の排出について,実験室内での微生物生態生理学的な研究から得た示唆をもとに計画した観測の,方法と得られた結果を概観した.土壌中で N2O 分圧が上昇するときに酸素分圧の低下が伴うことを季節凍土で示すことはできたものの,季節凍土での土壌ガス中酸素分圧を決定するメカニズムの解明には至らず,現象の理解ならびに広域評価方法の提案に課題が残された.一方で,農地での環境負荷をモデリングするために必要な実験室内での培養実験もあるはずで,土壌微生物反応の定量化とともに物質の生成及び消費反応と移動現象を区別する学理の構築がより一層望まれる.