抄録
気候変動といった広域で起こる環境変動に対する作物の応答を総合的に評価する際に有効なツールである作物モデルを広域に適用する際に加えるべき視点について,圃場での聞き取り調査の結果から広域の収量予測モデルを構築したタイ東北部の事例を用いて論じた. 聞き取り調査により把握したタイ東北部天水田の地域的な特徴である,地域的な移植時期のばらつきが水稲の生育期間の長さを通じて収量に影響するという事を表現したサブモデルを導入することで,タイ東北部の県単位の統計収量の時系列や地理的な特徴を良好に再現する事ができた.これらのことから,対象領域を広げる際には,作物生産において対象領域内のばらつきを生んでいる要因を把握し,圃場のモニタリングを通じて得られた知見に組み合わせることが必要であると考えられる.