抄録
東京電力福島第一原発事故により広範囲の森林が放射能汚染された.長期的な影響が懸念される放射性セシウム(Cs)は,森林においては事故から約 5 ヶ月後の 2011 年 8 ∼ 9 月には大部分が樹冠またはリター層に分布していたが,その後 1 年経過する間に移行し,鉱質土壌に存在する割合が増加した.事故直後の林内雨中の放射性 Cs は大部分が溶存態であった.林内雨およびリター層通過水中の放射性 Cs 濃度は時間の経過ととともに低下したが,夏季に上昇することがあり,このときは懸濁態の寄与が大きくなった.森林からの放射性 Cs の流出は,降雨により増水して懸濁物濃度が上昇すると増加した.流出水中の放射性 Cs の大部分は懸濁態であった.2012 年 3 月からの 9 ヶ月間における森林からの放射性 Cs の流出量は,流域の沈着量の 0.3 % と推定された.