冬季に土壌が凍結する網走地域の畑圃場において,マトリックポテンシャルの通年観測を行った.深さ0.05, 0.35, 0.45 m では誘電水ポテンシャルセンサ(MPS-1)を用い,凍土のマトリックポテンシャルは地温の関数で求めた.凍土の不凍水について,水ポテンシャルの低下を引き起こす要因を検討したところ,自然な状態(EC1:5 = 0.16 dS m−1)では浸透ポテンシャルの影響は無視できるほどに小さく,水ポテンシャルはマトリックポテンシャルに等しいとみなせた. MPS-1 について,メーカーが定めた較正式はテンシオメータによる実測値に比べ,マトリックポテンシャルを過小評価したが,較正の結果,高い精度での観測が可能となった.凍結期間中,最大土壌凍結深は 0.30 m 程度であり,非凍結期間よりもはるかにマトリックポテンシャルが下がる様子が観測された.そのため深さ 0.35 ∼ 0.45 m の水移動の方向は,非凍結期ではおおむね下向きであったのに対し,凍結期では,2 ヶ月から 3 ヶ月程度上向きが続いた.ただし非凍結期間であっても,年に 1 ∼ 2 回程度,深さ 0.05 m のマトリックポテンシャルが生長阻害水分点(−100 kPa)に達するほど低下した.このように本研究では,テンシオメータでは観測できないマトリックポテンシャルの低下(すなわち乾燥)の様子を明らかにすることができた.
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