本研究は,作物根の分布および土壌面蒸発の変動を考慮して土壌水分動態解析を行い,消費水量を定量化することを目的とするものである. HYDRUS-1D を援用して土壌水分動態を解析し,作物根の分布,吸水速度および土壌面蒸発速度の設定による精度の違いを検証した.作物根の生長を複数ケースに設定し,Dual crop coefficient を用いて蒸発散速度を土壌面蒸発速度および蒸散速度に分離定量化した.それぞれを土壌面の境界条件および作物根の吸水速度として与え,土壌水分動態解析を行った.計算結果の妥当性を検証するために,圃場実験を実施した.生育期間を通して作物根の深さを一定にしたケースでは,体積含水率の実測値と計算値の誤差が大きいことが示され,消費水量にも違いが生じていた.作物根の生長と土壌水分の減少に伴う蒸発の低下を考慮したケースでは,土壌水分状態の再現性は高くなり,体積含水率の計算値を用いて求めた消費水量と実測値は良く合っていた.