抄録
微生物は土壌や堆積物などの表層環境に普遍的に存在しており,様々な物質の環境動態に影響を与えている.環境微生物の大半は難培養性であり,また微生物自体のサイズが微小で直接観察が難しいことなどから,土壌など表層環境における微生物,元素,鉱物間の相互作用には未解明な点が多い.そのため,土壌における微生物 – 元素 – 鉱物相互作用を詳細に理解するためには,新しい in situ(原位置)微小領域観察法が必要とされる.本稿では,最近の我々の研究成果を紹介しながら,マイクロスケールの高い空間分解能で元素化学種の決定が可能な X 線顕微鏡(マイクロ X 線吸収微細構造法),遺伝子可視化法や微小電極法などを組み合わせ,土壌中の微生物 – 元素 – 鉱物反応を直接観察に基づいて解き明かす試みについて解説する.