抄録
土壌水分量,地温の将来予測計算に必要な土壌水理特性,土壌熱特性の決定は,多くの時間と労力,費用を要する.本研究では,公開された土壌情報とペドトランスファー関数(PTF)を用いた土壌水理・熱特性推定法の有用性を検討した.土壌情報を日本土壌インベントリーから抽出し,複数のPTFで土壌水理・熱特性を推定した.推定した土壌水理・熱特性と既往研究から得た土壌水理・熱特性を用いて土壌環境を計算し,両者の誤差が最小となる推定手法を最適とした.その後,最適推定手法で得た土壌水理・熱特性を用いて将来土壌環境を計算し,既往研究の計算結果と比較した.その結果,地温や体積含水率の予測結果では両者の間で差が生じたが,現在から将来までの変化量では大差はなかった.将来変化量評価に限定すれば,公開された土壌情報とPTFによって土壌水理・熱特性を推定しても妥当な評価が可能であることがわかった.