1995 年 11 巻 1 号 p. 59-67
我々医療側の術式の説明は患者側に十分な理解と納得が得られているだろうか。医学的に見ても選択の余地が複数ある場合に,我々は患者側に公平な情報を提供しているだろうか。これらの問題点を明らかにするとともに,各術式を施行された患者のQOLが手術後経時的にどのように変化するかを調査・解析するために,尿路変向患者に対する前向きQOL調査票を作成した。対象は,骨盤内悪性腫瘍に伴って膀胱の摘出術(直腸や子宮の合併切除症例を含む)を受け,尿路変向を施行された患者とした。調査票は患者の精神・身体的な問題などからなる「一般的」QOL調査票と,各術式に関連した質問及び術式に対する理解度や満足度などを尋ねる「術式別」QOL調査票から構成される。術前に「一般的」QOL調査のみを行っておき,術後3, 6, 12ケ月後に「一般的」および「術式別」の調査を行う。平成6年7月より多施設共同研究として開始している。今回はこの調査票の作成経過と,過去に尿路変向を受けた69例を対象に本調査票を使って行った予備調査の解析結果を報告した。