1993 年 10 巻 1 号 p. 1_51-1_62
同時に複数のユーザによって共有できるオブジェクトモデルをベースにしたCSCW基盤システム,「鼎談」(ていだん)と,その同時実行制御方式について述べる.このシステムは分散環境向けに拡張したMVCパラダイムに基づいており,テキストや図形などのデータをネットワークワイドに共有できる.各利用者の行なった編集操作は,実時間で他者に伝達される.このシステムは,われわれがすでに開発したUIMS「鼎」(かなえ)の拡張機能として使うことができ,種々の共同作業支援システムを構築するための基盤機能として利用可能である.また,明示的にロックを掛けることなくデータの一貫性を保つアルゴリズムを採用しており,利用者の操作の繁雑さを軽減している.本システムを実際に広域ネットワーク上で運用し,性能測定を行なったところ,(1)共有のための負荷は共同作業者の総数にはあまり影響されない,(2)共有制御のためのサーバプロセスとクライアント間の伝送遅延が各クライアントの性能に影響する,ことが判った.(2)の問題を回避するために,仮想時間アルゴリズムを本方式に応用することについて考察する.