我が国における歩行者の交通死亡事故の大半は道路横断中に発生しており,横断時の安全確保が大きな課題となっている.これらの対策としてバルブアウトの導入が挙げられる.バルブアウトとは,横断歩道部において歩道を車道側に拡幅し,歩行者の横断距離の短縮を図るもので,歩車の交錯機会の削減等が利点として挙げられる.そこで本研究では,単路部における無信号横断施設(標準型・二段階型・バルブアウト型)を対象に,ヘッドマウントディスプレイを用いた歩行実験を実施し,歩行者の横断行動と横断意識の両面から,各横断施設について比較分析を行った.その結果,無信号横断歩道へのバルブアウト導入により,横断時における歩行者の安全性及び円滑性が向上すると共に,ドライバーに対する歩行者の存在明示に効果的な対策であることが示された.