2025 年 11 巻 2 号 p. A_63-A_70
我が国では、世界保健機関の健康の定義を鑑みて、公共交通と精神的健康並びに社会的健康との関係に着目した研究が進められつつある。しかしながら、現時点では、公共交通の健康効果の非一様性には触れられていない。また、近年、各地で普及しつつある少需要乗合交通サービス(乗合タクシー等)の健康効果について言及した研究もあまり見られない。それ故、地域公共交通の多面的価値に含まれる健康の視点を踏まえた上で、当該交通サービスの導入地域の選定や再編等に関する定量的な議論は困難な状況にあると言える。そこで、本研究では、定時定路線型乗合タクシーに着目し、当該交通サービスの利用の有無による精神的健康及び社会的健康の差に関する要因分析を行い、それぞれの規定要因とその影響度を定量的に明らかにすることを主たる目的とする。