2017 年 3 巻 2 号 p. A_109-A_115
本研究では,高速道路連続走行時において,注意の解放がサグにおける勾配認知を向上させるとの仮説を措定し,室内実験を通じて同仮説を検証する.認知科学では,ある対象の変化検出は,持続的に注意を向けるヴィジランスが必要とされるが,その一方でヴィジランスは時間の経過に伴い低下するため,変化の見落としが生じるとされる.高速道路における運転は,進行方向前遠方の限られた範囲へ持続的に注意が向けられていると考えられ,サグ部における勾配変化の認知にヴィジランス低下が影響を与える可能性がある.一方で,ヴィジランス低下を低減・抑制するためには,持続的な注意を解放させることが有効である.そこで本研究では,進行方向に向けられた注意の解放がサグ部における勾配認知に与える影響について,選択的順応課題にもとづき検討する.その結果,注意の解放によりヴィジランス低下が低減されること,ならびに一定時間走行後のドライバーに対して注意の解放を行うことでサグ部における勾配認知が向上することが示された.