2017 年 3 巻 2 号 p. B_53-B_60
日本の高速道路において、交通事故または車両確保に至る逆走事案は毎年約 200 件程度発生している。 このため、高速道路会社は学識経験者の意見等を踏まえ、路面矢印標示等の対策を講じてきた。一方で軽度認知障害有病者に対してもこれらの対策が有効に働いているかは不明であった。そこで本研究では逆走している CG 動画を健常高齢者と軽度認知障害有病者に見せ、主として逆走に気づく時間を比べることで、両者の比較を実施した。 その結果、全体的には健常高齢者、軽度認知障害有病者ともに路面矢印標示、標識、大型看板が逆走対策として有効であり、気が付くまでの時間や気が付いた理由についても両者に有意な差は認められなかった。ただし、軽度認知症に病状が進行した者や一部の軽度認知障害有病者については道路側の対策の限界を示唆する結果が示された。