本研究は「路面状況」と「交通環境」の2つの因子が通学路を歩行する学生の注視行動に影響するとの仮説のもと,これら2つの因子が歩行者の視覚的注意に与える影響を把握することを目的とする.実験条件を統制可能な実写VR環境における動画視聴実験によって取得した視線データとアンケート調査結果を分析し,以下の3点が明らかとなった.1) 積雪と可動物がそれぞれ単独に負荷増となった場合の不動物への注視行動に対する影響は限定的であった,2) 積雪と可動物の有無が同時に負荷増となった場合,認知資源に余裕がなくなることで視覚的注意の働きが低下したことが原因となって,不動物への平均注視時間が増加した可能性がある,3) 不動物に対する交通安全意識と注視行動に関係性があることを示した.