抄録
経皮的電気神経刺激(TENS)を脳底動脈閉塞症による閉じ込め症候群3例に施行し,早期の四肢運動機能改善を経験したため報告する.TENSは,100 Hzの頻度で8∼10 mAの刺激を両側手関節部正中神経に施行した.症例1:脳底動脈閉塞により小脳・脳幹梗塞をきたし,閉じ込め症候群となった.理学療法開始後1週間でも四肢運動機能の改善なくTENSを併用した.開始日に両上肢の自発運動が出現した.症例2:脳底動脈閉塞により閉じ込め症候群となり,理学療法開始と同時にTENSを併用した.3日後には上肢の自発運動が可能となり,従命にも応ずるようになった.症例3:脳底動脈閉塞により脳幹梗塞を来たし閉じ込め症候群となった.理学療法開始後3日でも四肢の運動を認めず,TENSを併用したところ,その日に左上肢の自発運動が出現した.TENSは理学療法と併用することで,閉じ込め症候群における運動機能の改善を促す可能性がある.