脳卒中
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原著
ARB(アンジオテンシンII受容体ブロッカー)製剤による脳血管障害患者の認知機能改善効果
原 行弘本橋 優子小林 士郎
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2010 年 32 巻 4 号 p. 334-339

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抄録

【目的】脳血管障害を合併し血圧調節が不十分な高血圧症例でARB製剤の認知機能への影響を検討する.【対象】収縮期血圧140 mmHg以上かつ/または拡張期血圧90 mmHg以上の75歳以下の慢性期脳血管障害患者.【方法】バルサルタン(VAL)80 mgを投与し収縮期血圧140 mmHg未満かつ拡張期血圧90 mmHg未満を目標とする.投与開始時,投与後4,8カ月後に,MMSE,WMS-R論理的記憶項目,TMT,Rey複雑図形にて認知機能を評価した.【結果】19例(平均年齢70.3歳)においてVAL投与8カ月後に有意な降圧効果を認めた.また,8カ月後にはWMS-Rの言語性記憶の項目で統計的に有意な改善を認めたが,他の認知機能検査では統計的に有意な変化は認めなかった.【結論】VALによる脳神経系への言語性記銘力を中心とした選択的認知機能改善効果が示唆された.これは,降圧作用だけではなく,VALの持つAT2およびAT4受容体による海馬の賦活作用の関与が推察された.

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© 2010 日本脳卒中学会
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